産地紹介 野鍛冶刃物
産地風景
熊野川の河口に位置する新宮市は、かつて川の舟運を利用した木材や炭の集積地として栄え、人と物が行き交う熊野地方の中心地でした。その中で受け継がれた伝統工芸が「野鍛冶刃物」。斧や鉈などの林業関係の刃物が中心となります。1910年頃には30軒程の鍛冶屋が軒を連ねていたと言われています。
制作風景
「道具は人によって使い方が異なります。その使い心地によって仕事の効率が上がったり、売り上げが伸びたり、生活を左右します。だからこそ常に真剣勝負。山も鍛冶場も、命がけの現場だと思っています」と大川さん。
昔は手で鎚(つち)を持って、鉄や鋼(はがね)を叩き伸ばしていました。聞こえてくる金属音で、どの鍛冶場が鉄を鍛造しているのか分かるほど、それぞれに特徴のある叩き方をしたといいます。現在は、ベルトハンマーを使用。しかし最後は、鍛冶職人の手仕事。燃え盛る炉から、真っ赤に焼けた鉄を引き出し、鎚で打つ。「山で使う道具は木の節に負けないよう硬くないといけない。」